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トルコ出張(神棒 2019年9月)

久しぶりの投稿になりました。ミャンマーなど何度か出張があったのですが、原稿を書くことを怠けていました。

 

9月にトルコに視察で10日ほど滞在しました。初めての訪問で、私の通算訪問国数は53になりました。訪問中に感じたこと、考えたことを綴っていきたいと思います。読者の皆様のビジネスの参考になれば幸いです。

 

トルコは今でこそ「新興国」と分類されますが、ローマ帝国の一部として、また13世紀から第一次世界大戦後(1922年)までオスマン帝国として繁栄した大国で、文化の蓄積を感じ、ヨーロッパとアジアの交差点として魅力的な国でした。

 

<イスタンブール ボスポラス海峡 左はヨーロッパサイド、右はアジアサイド>

まずは、基礎データからの確認です。人口は82百万人(2018年トルコ国家統計局)で、年齢構成も若く、2040年には1億人を超えるという予測がなされています(出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2019)。一人当たりGDPは9,400ドルで日本の1/4強です。

 

2014年に大統領の直接選挙制が導入され当選したエルドアン大統領の就任に伴い、オスマン帝国の復活を目指しているのでしょうか、独裁的な傾向が強まっています。ロシアからの兵器調達に伴うアメリカとの緊張関係から通貨リラが暴落しました。2016年の初頭にはTRY/USD=2.9程度であったものが、2018年7月には7.1にまで暴落、直近(2019年9月16日)でも5.74となっており、2016年比でおよそ半分の水準となっています。トルコリリラの価値が落ちたことで物価が高騰、消費者物価は2017年に11%、2018年17%の上昇、失業率も2018年11%を超えています。通貨防衛のために中央銀行が金利引上げを図る必要があり、CBRT(トルコの中央銀行)によると翌日物レポ金利は2017年の7.25%から現在は15%になっています。(以上、出典 CBRT, 為替はYahoo Finance)

 

トルコの首都はアンカラですが、経済の中心はなんと言ってもイスタンブールでしょう。地図をみていただくとわかるのですが、ボスポラス海峡を挟んでヨーロッパ大陸とアジア大陸に位置しており、交通の要所で古くから栄え現在の人口は1,500万人で東京都の1300万人よりも大きいことになります。上記の通り、ここ数年の経済。ビジネスは相当混乱したものと思われ、イスタンブールでお会いしたビジネスマンも「この2年は仕事がなかった。ようやく動きつつある」、「工場で作るものがなく、作業員の給与が払えず大変だった」。「外国人がもともとドル建て取引されているものは大きく変わらないが、現地のリラ建で取引するのは安くなっている」などと言っていました。

 

私が注目しているのはEU加入の問題です。トルコは現在EUに加盟していません。トルコはイスラム教徒が多く、もちろんキリスト教の多いヨーロッパと歴史的に確執があるののは一般問題として当然ですが、現地で幾度も聞いたのはキプロス問題です。トルコの南、地中海を隔ててキプロス島があり、南側はギリシャ系住民が多く、国としてEUに加盟しています。一方で、北側はトルコ系住民が多く、内戦状態になった1983年に、トルコは自国の一部として独立宣言をします。しかし、これはトルコのみ承認していて、国際的に認められていません。この問題が象徴的な問題となって、トルコのEU加盟交渉がストップしているといいます。

 

<ギリシャとの戦争で有名なトロイ遺跡>

為替変動や経済の不安定な状態、もともとドイツ、フランス、イタリアなどとの直接投資、貿易の関係を考えるとトルコがEUに加盟することはメリットが多いと思われます。現地を移動しているとメルセデスベンツ、BMW、アパレルHugo Bossなどのドイツ系企業の工場など目立ちました。EUに加盟してユーロを採用すれば、ドルに対する過剰なボラティリティが解消するでしょう。また、関係の深いドイツ、イタリアなどからさらなる直接投資の増加が見込まれます。調査でもトルコ内ではEU加盟に賛成が、反対を上回っているという結果が出ています。(例:Daily Newsによる2018年調査では78%が賛成)

 

EU側にとっても大きなメリットがあります。イギリスのBrexit問題、その他の国でも反EUの動きが顕在化するなか、人口や経済規模の大きいトルコの加盟がEUの規模を大きくします。また、中央アジア(トルクメニスタン、カザフスタンなど)への足がかりを得ます。トルコ人はもともと中央アジアの遊牧民族に起源を持ち、現在もビジネス関係が深いようです、EUにとっては馴染みの薄い市場への足が狩りを得る他、一帯一路を進める中国への牽制にもなると思われます。

 

EU加盟は短期的に想定し難いですが、長い目で宗教的な確執やキプルス問題を乗り越え、経済メリットを追求する方向に動く可能性はあると考えます。日本の企業にとっては、人件費は東南アジアと比べると高いものの、ヨーロッパ、アフリカ、中央アジアにつながる拠点として有望と思われます。