コラム
column
2025-06-02
バークシャーハサウェイ株主総会出席 Part2(神棒 2025年5月)
パート2では、株主総会の当日の様子、運営など感じたことについて記述します。
まずは、バークシャーの株主になるためには、「すごい金額が必要でしょう。」などいわれますが、そんなことはありません。バークシャーハサウェイクラスA株であれば、最小で1株75万㌦(2025年5月10日現在 約1億1千万円)となりますが、クラスB株が取引可能で現時点1株約500ドルで取引されています。日本円で8万円あれば株主になれます。この辺りは特定の富裕層に株主になってもらうより、株式分割して多くの人に門戸を開き、バークシャーを知ってもらい、実際にビジネス果実を得てほしいというバフェット氏の哲学が出ているように思います。
株主総会は例年5月の第一土曜日に行われているようです。日本ではGWということもあり、エアチケットも値上がりするので渡航への障害になりますが、私の場合、今回は保有しているカリフォルニアで不動産の名義変更手続きなどいくつか用事がありましたのでGWの10日ほど前(4月17日)に早めに渡航し、それらを済ませてから参加する形をとりました。
実際オマハにつくと、当日は下記のようなクレデンシャルをもらわないと入場できません。そのためにはWill Callという場所に行き、パスポートなどの身分証明書、自分がバークシャーの株主であることを証明しなければなりません。私は直近の證券会社の残高証明書を印刷してもっていき、自分名義の口座にバークシャー株式が存在していることを説明しました。係員からあっさり「Perfect」と言われクレデンシャルを渡されました。
<Will Callとクレデンシャル>


朝7時が入場時間で、私は6時半くらいに到着しましたが、すでに長蛇の列でいかに熱心な株主が多いことがわかります。会社発表によると参加した株主は2万人とのことでした。列に並んでいる間も株主の間で「どこから来たの?」、「今年初めて?」から始まり、金融市場やバフェット氏の話題などやや興奮気味な会話が聞こえました。
<早朝から入場を待つ行列>

8時より名物の株主Q&Aセッションから始まります。株主からの質問に答えるのはバフェット氏に加え、副会長でエネルギー部門の会長(バークシャーは石油会社に投資しています)のGreg Abel氏、保険部門(バークシャーはGEICOという損害保険会社を経営しています)トップのAjit Jain氏です。バフェット氏も述べていますが、Abel氏はカナダ出身、Jain氏はインド出身で経営チームも多様で国際的です。バフェット氏の子供や親せきは経営メンバーに見当たりません。バフェット氏の投資はアメリカ国内が大半ですが、バフェット氏は多様性を好み、実力主義でビジネス合理性を徹底していると感じます。
総会に参加している株主の座席はゾーンで分けられており、各ゾーンから代表者が選ばれ対面で質問します。一方、金融情報番組を扱うCNBCが生放送しており、CNBCが参加できない株主のために事前にメールで質問を受け、ホストのBecky Quick氏が代わりに質問します。対面での質問とBecky Quick氏による代理質問を交互に行うという形で進んでいきます。
Q&Aの内容についてはパート3で記述しますが、驚異的なのはバフェット氏の94歳と思えない知性のシャープさ、体力、気力でした。Q&Aセッションは8時に始まり10時半まで2時間半、30分の休憩をはさんで11時から1時まで2時間、合計4時間半、いろいろな株主から質問を受け、一つの質問に対し、回答では必ずと言っていいほど笑いをとります。バフェット氏の手元に回答集などの原稿があるようには見えず、その場で考えて回答しているようでした。さらには、Q&Aセッションが終わり午後2時から会社の決議を行う株主総会の本論部分が開催され、バフェット氏は当然議長として参加します。
私は日本企業の株主総会に参加することがありますが、社長(議長)は議事進行の原稿を読み上げ、担当部署が想定問答集を作成していて、Q&Aでは問答集に基き読み上げるという形になります。日本の株主総会に限らず国会でも大臣は役人が作成した想定問答集をそのまま読み上げることがほとんどで、いつもつまらないと感じます。自分の頭で考えて即答でこたえるからこそ株主は経営者の顔、人となり、考えがビビッドにわかり、投資判断することができると考えます。何時間もかけて株主の質問に答える株主総会をバフェット氏は60年間続けており、この点が多くの株主を引き付け、株主は納得して長期継続保有し、バークシャーの株価上昇につながったのではないかと思います。ちなみに1964年~2024年でバークシャー株式は550万パーセント上昇し、年複利換算で19.9%となっています。アメリカの株式市場の動向を示すS&P500指数が同期間で3万9千パーセント、年換算で10.4%となっており、いかにバークシャーの上昇率が高いかがわかります。(数値は本年のバフェット氏から株主への書簡に記載されています。)
その他、当日の様子ですが、株主総会の会場は広く、バークシャーの投資先企業がブースを持ち、自社製品のPRや販売を行っています。私はアメリカに行ったときに時々購入しているSee’s Candiesのチョコレート詰め合わせ(株主用特別バージョン)がありましたのでお土産用に購入しました。バフェット氏も好きなホットドッグなども販売しており、私もランチでいただきました。株主総会の翌日にはランニング大会もあります。
<株主総会会場> バークシャー投資先がPR、販売も。


日本の株主総会では大手外食チェーンの株主総会に参加したことがありますが、そこではマグロの解体ショーを見たりしたことがありますが、これほどの規模、株主の参加アクティビティ種類の多さは当然ありませんでした。バークシャーの株主総会の話は聞いていましたが、想像を超えるものでした。
いよいよ株主総会の中身、バフェット氏が何を語ったかなどQ&Aセッションの内容の紹介をパート3にて記載します。