コラム
column
2025-07-09
アブダビ出張(神棒 2025年6月)
5月はアメリカに参りましたが、今月は趣向を変えてアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビに行ってきました。
UAE(United Arab Emirate)は7つの首長国の連合体となります。最も有名な首長国はドバイです。今回訪問したアブダビは、UAEの首都となっており、UAE大統領もアブダビ首長が務めており、政治的な中心地となっています。
ドバイは石油や天然ガス開発依存の経済から脱却するために法人税、所得税の減免、外国人労働者雇用規制緩和などを行い外国からの投資を呼び込み発展し注目を集め続けていますが、実はアブダビで生まれる石油や天然ガス開発の富を活用し、ドバイが発展してきたと見えます。例えば、ドバイにある世界一高い高層ビルであるブルジュ・ハリファは建設中にリーマン破綻に伴う世界金融危機に見舞われ、プロジェクトが遅延し、テナントも集まりにくい状態でした。ここで資金の豊富なアブダビがサポートした結果、ようやく開業にこぎつけたようです。このため、ビルの名前をアブダビ首長のハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンの名前を組み合わせてブルジュ・ハリファとなったようです。(参考:Burj Khalifa, Britannica)
ドバイは経済解放政策の結果、観光、貿易・物流、金融、不動産などが成長し、多角化に成功したようです。一人当りGDPはIMFによる2024年推計で約54, 000ドルで日本の1.6倍の水準になっています。(以下GDPデータも同様)
一方、アブダビの一人当りGDPは2024年85,000ドルで日本の2.5倍以上になっていますが、UAE内でさらに経済を石油・天然ガス一本足経済から脱却を進めるべく、アブダビも開放路線に進んでいるようです。
<アブダビの象徴的なConrad Abu Dhabi Etihad Tower>

今回訪問では、外国人向け投資用不動産を視察し、Yas地区を回りました。滞在ホテル、対応いただいた不動産会社では、インドやパキスタン出身の方が多く働いており、英語が流暢で楽でしたし、街の雰囲気がヨーロッパで国際的な環境でした。また、ドバイや東南アジアなどの新興国の中心地と比較し、人口が少なく、交通などで混雑があまり発生せず、ストレスが少ないと感じました。
Yas地区では、ホテルやマンション建設の他、F1サーキット場があり、アブダビグランプリの開催地となっています。Ferrariや映画・テレビ制作大手のWarner Brothersのテーマパークがあります。今回渡航の直前にアメリカのWalt Disney CompanyがYas地区に2030~33年を目途にテーマパークを開園する計画を発表しました。(ディズニー社公表https://thewaltdisneycompany.com/disney-announces-abu-dhabi-theme-park/)中東でのディズニーランド建設は初めてです。将来的にはエンタテイメント環境、集積度でシンガポールに匹敵、あるいは凌駕する可能性を感じました。
<アブダビの開発模型>

世界地図の中でアブダビを見ていると、ビジネスでも国際的なハブになる可能性を感じます。インド、パキスタンなど伝統的にヒトのつながりも強く、加えてオマーンなど他の中東アラブ諸国、かつてペルシャと言われたイラン、アラブ諸国(モロッコ、チュニジア等)を含むアフリカなど、これから成長が期待できる地域へのアクセスに優れています。物販貿易やアブダビを拠点としてこれらの国へ投資を行う等イメージしやすいです。ナショナルフラッグの航空会社はEtihadで、Zayed国際空港を拠点としていますが、航空機は設備、機材も最新で快適で上記地域へのネットワークも充実していました。空港も2024年に国際ターミナルが改装オープンし、デザインなど凝った現代的なものでした。
<独特のデザインで現代的なZayed国際空港>

アブダビ、ドバイを含むUAEでは不動産投資や預金などを行う投資家や現地会社オーナーやその関係者、高度な知識を持った科学者、医者、エンジニアなどにGolden Visaを発行しています。生活するとなると確かに気候は過酷なくらい高く、外は暑い、また何事も人造的な印象ですが、建物の中は快適で、現代的です。詳細は聞けませんでしたが、医療や教育へのアクセスもビザを持つ外国人に開放されています。ビザは不動産投資や預金をするなら200万AED(2025年7月8日時点1UAEディルハム=40円として8,000万円)以上が要件となっており、他の先進国と比較してハードルが低いです。
これらを踏まえると、ビジネスの拠点としてシンガポール、オーストラリア、カナダなどを凌駕しうる潜在力があると感じました。今後も重点的にフォローする考えです。