コラム
column
2017-07-26
サンフランシスコ出張(神棒 2017年6月)
神棒です。アメリカ西海岸のサンフランシスコに出張しましたので、感じたことを書きたいと思います。
まずサンフランシスコ。太陽があふれ、温暖な気候で私の好きな都市のひとつです。ビジネス上は、ベイエリアが「シリコンバレー」と呼ばれ世界で最も起業家が集まってい都市と言われています。
最近は、人工知能(AI)、自動運転、ドローン、ビッグデータ、ロボットなどが実用化が射程に入り、急激な技術革新が起ころうとしています。生活を一変させる技術で、多くの関連サービスが生まれる期待が高まっています。これらの新技術を主導する企業群として、会社の頭文字をとって「FAANG」(FANGは英語で「きば」という意味)と呼ばれています。つまりFacebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleといった企業です。これらの企業の本社や創業地を調べてみるとAmazonを除きすべてサンフランシスコの周辺です。この意味で、サンフランシスコは世界に最も影響力を与える企業が集積しており、世界をリードしていると考えられます。その他、電気自動車で著名なTesla Motorsもサンフランシスコの近くパロ・アルト(Palo Alto)にあります。尚、Amazonはサンフランシスコの北のワシントン州シアトルが本社です。
パロ・アルトにはスタンフォード大学、バークレーにはカリフォルニア大学バークレー校と世界トップレベルの大学が存在し、起業家の育成、共同研究など多層的に結びつき、サンフランシスコを特徴づけています。
<サンフランシスコの金融街>
今回の出張で感じたのは物価の高さです。宿泊先はサンフランシスコの金融街にあり、著名なホテルチェーンのものだったのですが、宿泊代の高さもさることながら、レンタカーの駐車場料金も徴収されました。普通、日本ではホテルの宿泊客がそのホテルの駐車場に駐車する場合は無料の感覚ですが、1日当り54ドル(約6,000円)請求されました。5日間でしたので3万円の駐車料金が発生しました。
所得が増えず、サービス料金など価格を転嫁しにくい日本からするとうらやましい状況です。有力企業やベンチャーが集積し、現地への出張の需要も強いため、駐車料金にも強気の価格設定が可能になっていると感じました。その他、食事代なども割高感がありました。
<太陽輝くサンフランシスコのベイブリッジから>
但し、車で移動し、一歩、中心地を離れると、さびれた感じで、治安もよくない雰囲気のエリアにぶち当たります。ビジネスが活発で、成長し、サービス水準も最高な地域と、成長に乗れず、沈んでいっている地域、人材が明確に分かれていて、このあたりはアメリカの典型的な現象を見ました。富が少数者に集中すると、全体として財・サービスの需要が高まらず、デフレ傾向が強まり、社会分断などが生じます。現にアメリカの実質GDP成長率は私にとって意外と低く、2006年以降、一度も3%を超えたことはありません(IMF World Economic Outlookによる)。しかも人口が減少する日本と違い、毎年2百万人前後増えているにも関わらずです。(2017年の推計人口は3億2500万人)。富の偏在という意味では、例えば、比較的順調に経済が拡大した2009年~2012年にかけて、上位10%の収入は12%上昇しているのに対して、下位90%はマイナスで減少しているというデータがあります。(出所:Saving capitalism P162)つまり、上位層は経済成長の恩恵を享受する一方、大多数の90%は貧しくなっているのです。
人工知能やロボットなどの技術が進むとますますこういった傾向に拍車がかかると思われます。人工知能は将棋などでトップレベル棋士を打ち負かすまでになっています。工場の製造現場、運送サービス業などに加え、現在は複雑で知識集約型とされる職業(例えば金融、コンサルティング、税務・会計、法務サービス)でさえ、人口知能で不要になり、代替される職業についていた人々は従来より低い賃金で働かざるをえなくなったり、新しい不慣れな仕事を長い時間をかけて探すことを余儀なくされる傾向(長期失業)が強まると予想されます。一方で、先述のFAANGなどの企業はプラットフォームを握り、消費者やユーザーなどに対し、ほぼ独占的な力を持ち、それら企業の経営層、株主は多くの富を集積することになるでしょう。
現在、アメリカではトランプ大統領が、「アメリカ・ファースト」の掛け声のもと、税制改正の動きも出ています。しかし、税制改正の目玉も法人税の減税など前世紀から取り組んだ陳腐な内容です。一方、日本では、首相が特区制度を利用し、大学の獣医学部新設に関与した、しないなどの議論が盛んです。皮相的な政策論争がなされているようで、極めて残念に感じます。これら論争は上で述べた現象、つまり人口知能やロボットなどがもたらすと予想される長期的で、深刻な問題を軽減、改善することにはつながらないと思います。両国は優れたリーダーのもと、税制、社会保障、一部の巨大企業が独占的な力を発揮する中での公正な市場・ビジネス制度など本質的な、新しい時代に適応した制度設計が必要と考えます。



