トップページ > スコットランド出張(神棒 2018年6月)

スコットランド出張(神棒 2018年6月)

6月にスコットランドに出張してまいりました。以前、首都のエディンバラに訪問したことがありましたが、今回はアバディーン(Aberdeen)でした。スコットランドは北緯55度周辺にあり、よく比較される北海道が北緯45典程度ですのでより北に位置しますが、西岸海洋性気候で寒暖差が少く過ごしやすいところです。この出張直後に訪問したインドネシの熱帯雨林気候との差は大きかったです。

 

〈アバディーン近辺〉

スコットランドは、いわゆるイギリス(北アイルランド連合王国、英語でのThe United Kingdom)を構成する一つのカントリーですが、独立した法制度、教育制度を持っています。

 

人口とGDPデータを確認してみます。2016年での人口は540万人ですので、ほぼ北海道の人口と同じです。2014年の購買力平価ベースでの一人当りGDPは41,000ドルあまりで、イギリスの連合王国全体が40,000ドルであることから、ロンドンなどを含むイングランドを上回っていることになります。日本が同時点で約36,000ドルなので、日本より15%程度豊かな水準です。(データはNational Record of Scotlandより)

 

〈マッカランの醸造場〉

 

車で走ってみると、山と草原、林ばかりが目立ち、人の賑わいも感じません。日本より15%高い豊かさを実現しているのは、北海油田があることも一つの要因と考えられますが、それだけではないように思います。今回、スコッチウイスキーで有名なマッカランの醸造所やショートブレッド(バタークッキー)で有名なウオーカーズの本社工場などを訪れて、豊かさを生むビジネスの土壌を感じましたので、紹介したいと思います。

 

スコッチウイスキーを産業として見て行くと、2017年にスコットランドから43億59百万ポンド(年間平均為替レート JPY/GBP=144として6,280億円/)の輸出が行われました。最大の輸出先はアメリカで、フランス、シンガポール、ドイツと続きます。(出所:Scotch Whisky Association)

 

この輸出金額は日本との比較で考えると非常に大きいと思います。例えば、同じように歴史がある日本酒(清酒)の日本全体の輸出額は2017年、わずか187億円で、スコットランドのおよそ35分の一です(この金額は海外の和食ブームもあって過去最高のようです)。また、スコットランドの人口は日本のわずか20分の1以下ですからいかにスコットランドへのインパクトが大きいかがわかるかと思います。天候、土壌などがウヰスキー製造に適し、醸造技術などが蓄積されており、いわゆる比較優位産業なのだと思います。

 

スコッチウイスキー産業は製造、醸造もさることながら、マーケティングでも優れていると思います。

 

マーケティングの教科書にも出てくる古典的なケースなのでご存じの方も多いと思いますが、スコッチウヰスキーでマッカランなどと並ぶ有名なジョニーウオーカーのケースが有名です。ジョニウオーカーはもともとレッドラベル、ブラックラベルとありましたが、マスマーケット向けのブランドです。顧客層を細分化し、ゴールド、プラチナ、そしてブルーラベルを加え、高価格ラベルを作るマーケティングを行ったのです。これによりジョニーウオーカーを製造、販売するDIAGEO PLC社の売上、収益は大きく向上したと言います。

 

ゴールド、プラチナ、ブルーラベルとそれぞれ違うメッセージを設定し、免税店や酒店での陳列、期間限定のバーや各種イベントとのコラボといった販売イベント、コマーシャル、ネット広告などぶれることなく首尾統一して発信を継続し、長期的に着実にジョニーウオーカーブランド育成を図っているように感じます。これらが、顧客の再購買を生み、価格の維持、引き上げを生み出していると感じます。

 

この事例は、日本の企業にとっても学ぶべきことが多いのではないかと思います。スコッチウイスキー製造は昔からある醸造技術で決してハイテクというわけではないと思います。小さな国内市場に依存することなく、海外市場を開拓する。顧客をセグメントし、違うニーズに対応し、長期的にブランドを構築し、育成する。これらマーケティング力は多くの日本企業に欠けていることではないかと思います。

 

経営側は顧客のターゲットを明確にせず、競合他社と同じような新商品を毎年のように投入し、横並びで販売競争を仕掛けてしまう。ブランドを構築する意識がなく、前年実績をベースに販売目標を与えて予算管理して経営した気になっている。現場は、販売競争で目先の需要獲得に一喜一憂し、疲弊し、ブランド成長に繋がる活動をしない。

 

このよう単年度の販売競争を10回続けるのと、ブランドを構築と顧客保持を意識した長期戦略に基づいて10年活動するのと同じ10年でも大きな差が出るでしょう。

 

また、今回はショートブレッドのトップブランドWalkers社の本社工場も見学種ましたが、ウイスキーと同じことが言えると思います。小麦粉、佐藤、バターを焼いたシンプルなクッキーですが、空港のみならず、日本のスーパーや百貨店でブランド認知を得て日本のクッキーより高く売られています。

 

〈ウオーカーズの本社工場〉

あっと驚くようなハイテクでない商品を、人の少ない地方で製造しても、世界をベースにうまくマーケティングすれば、収益も拡大し、豊かになれる。こんなヒントに溢れたスコットランドでした。