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コラム

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2018-04-26

イタリア出張(神棒 2018年4月)

神棒です。4月にイタリアのトスカーナ地方に出張してまいりました。トスカーナ地方は、イタリア中部に位置し、フィレンツェ、斜塔で有名なピサ、シエナ、ルッカ,などの都市があります。ルネッサンス期の「万能の天才」と言われ、芸術、建築。数学など多分野に業績を残したたレオナルド・ダ・ビンチもフィレンツェのビンチ村で生まれていて、今回、車で通りかかりました。残念ながら博物館などに立ち寄る時間がありませんでしたが。

 

<ダ・ビンチ像 近寄ると見つめられているような感覚及びピサの斜塔>

基本データを確認してみます。2016年時点でのトスカーナ州人口は374万人です。イタリアの人口が60万人余りですので、6%程度を占めます。一人当りGDPは30,749ユーロであり、日本とほぼ同じ水準といえます。産業としては、毎年1000万の旅行者(うち3分の1が外国人)が訪れることもあってか、交通、ホテル、物販などのサービス産業のウエートが高いようです。伝統的に「Made in Italy」の革製品、靴、洋服などの産業が盛んです。(データはEuropean Commissionホームページ)。

 

先端分野では、ライフサイエンス、機械工学、車、航空・宇宙関連の産業のクラスター化を図っているようです。これに呼応して、大手日本企業の進出も見られます。東レ㈱は2015年、ルッカにある樹脂開発・製造を行うDelta Tech社を買収し、炭素繊維事業拡大を図っています。エネルギー、機械関連のヤンマー㈱は欧州の開発拠点を2011年以来フィレンツェに置いています。㈱日立製作所は鉄道事業の現地会社(Hitachi rail Italy S.p.A)があります。(出所:各社ホームページ)

 

イタリア、ドイツ、フランスなどは日本と技術水準が似ていることが多く、モノづくりにもこだわりがあって製造業の産業基盤が大きい国です。自国市場では規模が不十分で、海外に販売していかざるをえないという点でも日本に似ていると考えています。一方、アメリカやイギリスはモノづくりよりもITや金融の3次産業のウエートが高い。加えてアメリカは自国市場が世界最大であるためまず国内市場が優先であるといった状況があります。このため、一般的に日本企業にとって参考になるのは今回のイタリアやドイツ、フランスではないかと思っています。

 

こんな問題意識で、今回出張で発見したことをご紹介したいと思います。私はフィレンツェからミラノへの移動にあたって、高速鉄道を利用しました。2時間弱の旅でした。汽車の中で、速度が表示されるのですが、なんと時速300キロを記録していました。同じように大都市間を走る東海道新幹線の最高速度が285キロですから、かなり早いことになります。また、速さだけでなく騒音や揺れも日本の新幹線より少なく感じ、快適でした。列車の製造会社を調べたところフランスの鉄道業界の巨人Alstom社でした。

<300Kmを記録したAlstom社製列車>

 

最近は、「日本のサービスや製品はすばらしい」、「他の国にはないこだわりのものだ」など外国人の反応を紹介し、日本の商品・サービスを礼賛するような番組の放映が多く、新幹線などもよく紹介されます。上り線で東京駅に到着次第、すぐに掃除スタッフの方が手早く清掃を行い、数分間でチリが落ちていない状態で東京駅から出発できるように整えてしまうというものです。これを見て外国人が「すごい。さすが日本。」とか「清掃スタッフを私たちの国に連れて帰りたい」などというものです。

 

こういうものを見ていると、新幹線など他の先進国を技術的にはるかに優れているような印象を持ちがちで、私も「新幹線は世界最高のはずだ」と思っていました。確かに、車内の清潔さ、時間の正確さなどは日本の方が優れていると思います。今回、イタリアでも他の欧州の国と同様、自分の列車がどのプラットフォームに到着するかが10~15分前にならないとわからないといった不便な点もあります。新幹線であれば、事前にどのプラットフォームに到着するかがわかっており、高齢者や身体が不自由な方は安心と思われます。

 

一方で、スピード、騒音、揺れなど鉄道サービスの質を決める重要な項目は、むしろイタリア、欧州の方が優れている可能性があります。長い歴史のあるヨーロッパで使われている商品やサービスは優れているから使い続けられ、ヨーロッパ以外でも購入されている。日本製だけが優れていることはありえない。日本が優れているのは現場のオペレーションの質だけであるケースが多いように思います。

 

テレビなどで上記のような番組が広く、多く流れて、その情報につかってしまうと、集団での思い込みが進み、「自分たちは優れている」、「世界なんて大したことない」と考えてしまう日本人の悪い傾向が生じることを懸念します。情報が偏り、見たいものだけ見る、自分の認識にあった情報だけが組織で下から上に伝わり、組織トップがそれに基づき意思決定してしまう危険が高まります。日本に閉じこもって情報収集するのでなく、ヨーロッパなど海外出張に出かけ、価値観の違う人に話を聞き、日本と違った体験をしなければ、世界のビジネス動向などに乗り遅れ、競争力、創造力を失い、結局、貧しくなってしまう。このようなことに思いをはせたイタリア出張でした。